第22話　　

私が最後に聡を見たのは、あの硫酸のプールのそばだった。

彼は私の頭を抱え、丁寧に美しい白いヴェールをかぶせてくれた。

そのそばには、篠宮葵と篠宮薫が縛られていた。

「聡、俺にやるならやれ！妹は関係ない！」

「薫、お前にも怖がる時があったとはな」

聡は私をテーブルの上に置き、顔に存在しない埃をそっと拭った。

彼は腐りかけた私の頭にキスをし、微笑んで言った。

「星ちゃん、いい子にしてね。お兄ちゃんが星ちゃんをいじめた人たちを片付けたら、一緒に家に帰ろう」

やめて——

聡、狂っているの？これは犯罪だよ！

「聡、狂ったのか？牢獄を襲撃するだけでなく、誘拐までするなんて！警察はすぐに気づくのよ！あなた……あなたは自分の将来を台無しにしてはいけない！」

「将来？俺に将来なんてもうないよ」

聡は笑いながら言った。「なぜ俺が医者になりたかったか知ってるか？星ちゃんが12歳の時、彼女が高熱で死にかけた。俺は彼女を背負って近所の人に助けを求めたが、誰も助けてくれなかった。あの時、俺は決心したんだ。俺は医者になる。もう誰にも頼ることなく、俺の星が暗闇の中で消えることをゆるせない」

「なぜ、海外留学のチャンスがあったのに、俺がここに残ったか知ってるか？星ちゃんがまだ学校に通っていたからだ。俺は彼女を連れて行く適切なタイミングを待っていた。俺の人生はすべて彼女のためだった。彼女が幸せに暮らせるようにするためだ。でも……」

聡の笑顔は涙を含んでいたが、彼の声は次第に優しくなった。

「これまでずっと、俺は一生懸命お金を稼いで、彼女を大切に守ってきた。彼女に最高の生活を与えたかったが、気づかなかったんだ。彼女はもうすでに傷だらけだったって。でも、大丈夫。もうすぐ全てが終わる。俺が星ちゃんに借りていたものは、必ず返す。お前たちが星ちゃんに借りていたものも、一緒に返してもらうよ」

聡は薫を硫酸のプールに投げ込む時、何のためらいもなかった。

彼はただ冷淡に見つめていた。かつての友人が強酸の中で苦しみ、やがて静かになったのを。

葵はとても怯え、必死に抵抗していた。「やめて……聡、私は関係ないよ。兄さんが私のために人を殺すなんて、本当に知らなかった…」

「知ってるよ。お前がここに永遠に残ったら、星ちゃんは喜ばないだろうし。安心して、